スイスで発生した、土砂崩れにより崩落した老朽化道路トンネル内の狭小空間における緊急調査

2025/6/26

スイスアルプスで道路トンネルが土砂崩れによって崩落し、村へのアクセスが遮断され、地元のスキーリゾートにも影響が出ました。ELIOS 3は、崩落したトンネルの調査と、安全な対応策の作成に貢献しました。

メリットの概要

安全性

トンネル内部への侵入は安全性の面から不可能であったため、自治体は状況把握のためにELIOS 3を使用しました。

効率

ELIOS 3は迅速に展開され、LiDARとカメラによるデータを同時に取得し、それらは問題の調査と対応計画策定に使用されました。

分析

ELIOS 3のLiDARスキャンから得られた点群データにより、自治体は崩れた土砂がどこから入り込んだのか、その経路も含め、トンネルの内外を明確に確認できました。

スピード

迅速な対応の後、修復工事はすぐに開始され、トンネルは同年6月に再開通。夏シーズン前の地域交通への混乱は最小限に抑えることができました。

2024年2月3日の夜、スイスのリッデス周辺の谷で複数の土砂崩れが発生しました。リッデスとラ・ツマズ間の道路トンネルが部分的に崩壊し、村々へのアクセスが制限され、人気のスキー場への道路が一部遮断されました。トンネルが閉鎖されると、地元住民や観光客が目的地に到着するまでに長時間の迂回を強いられることになりました。そのため、トンネル再開までの期間を迅速に把握し、地域住民や観光客への情報提供をすることが求められたのです。

トンネル内部
瓦礫で覆われたトンネル内部(画像提供:Canton Valais)

しかし、トンネルへのアクセスは非常に困難で、調査員にとって非常に危険な状況でした。とはいえ、トンネルの修復方法や次のステップを決定するためには、状況をいち早く把握することが不可欠でした。

アルプスの奥深くで、自治体の調査員たちは革新的なソリューションに注目し、解決策を見出そうとしたのです。

ドローンによる土砂崩れの調査計画

土砂崩れはヴァレー州で発生しました。自治体は、土砂崩れの原因と道路トンネルの被害状況、そしてトンネルがなぜこれほど深刻な被害を受けたのかを突き止める必要がありました。徹底的な調査によってその原因を追究し、将来の土砂崩れによる影響を予測、さらにはその被害を軽減する方法を刷新できるようになります。

土砂崩れ周辺の状況が不安定だったため、トンネル内に入ってデータを収集することはできず、遠隔での調査が迅速に結果を得られる唯一の選択肢でした。そのため、ヴァレーの自治体は、調査を進めるため測量ペイロードを搭載したELIOS 3を採用しました。自治体は、トンネル内の状況と崩落の潜在的な原因の全体像を把握するため、トンネルの写真、動画、LiDARの点群を収集することを目指しました。それによって得られた成果は、修復作業の計画や、同様の自然災害の研究に活用することができます。

崩壊したトンネル内でドローンを飛ばす

この道路トンネルは数十年前に開通したもので、その設計が崩壊の原因の一部であると考えられています。トンネルの外壁には、建設中に作られた自然光を取り入れる小さな窓がありました。この窓には技術的な目的 (避難場所など) はなく、単に光と空気を取り入れるためだけのものだったようです。この窓が構造全体の健全性に問題を引き起こしていた可能性があります。

事件発生から24時間以内にヴァレー州の自治体のドローンパイロットが現場に到着し、調査の計画に取り掛かりました。窓の周りの岩とその周辺がすぐに調査の焦点とされ、データ収集のため、ELIOS 3による数回の飛行が行われました。

天井が崩れ落ちた様子
土砂崩れによってトンネルの天井が崩れ落ちた様子(ELIOS 3からの映像)

最初の飛行は、岩石の配置、トンネルの損傷具合など、塞がれた壁を再度開通させ空間を確保することを目的とし、状況情報を特定するために実施されました。この調査で収集された主なデータは、LiDARによる点群でした。

また追加の飛行により、窓の調査と、それがどのようにトンネルを弱体化させ、このような災害をもたらしたのかを調べるために行われました。この飛行では、それら分析のための詳細な写真と動画の収集に焦点が当てられました。

崩落したトンネルのドローン調査結果

ELIOS 3で撮影された画像により、状況の実態と、それが時間とともにどのように悪化していったかが明らかになりました。トンネルが1960年代に建設された当初、窓は開け放たれていました。この冷たい空気の流れにより、凍結融解風化 (岩石内部で水が凍結して膨張し、時間の経過とともに亀裂や断層が生じる) の影響がトンネル内で大きくました。さらに、窓が存在するだけで、隙間にかかる縦方向および横方向の力が損なわれ、構造上の弱点が生じていました。

調査員はまた、このトンネルの最初の掘削時に爆薬が使用されたと考えていました。これにより岩盤の減圧が起こり、外気にさらされているトンネルの外側の壁が弱まる可能性があります。

LiDARスキャン
LiDARスキャンにより、崩落したトンネル部分の構成と土砂が通過した場所が明確に表示される

長年にわたり、窓周辺の岩盤は、風化、交通振動、1960年代以降に発生した小規模な地震などにより、徐々に弱体化し欠陥が生じていました。 岩盤は60年を経て弱体化し、実際、2023年後半にはその兆候が見られていました。2023年12月には、トンネルと窓の外側の壁に影響を及ぼす小規模な落石があり、同月には2度目の落石が発生していました。これにより、トンネルと地表を隔てる岩柱の厚みが減少、アーチ効果も減少し安定性が損なわれていました。

緊急対応におけるドローンの影響

ELIOS 3がなければ、事故現場にアクセスして調査するのは非常に困難だったでしょう。内部に人を送り込むことは不可能であったため、データ収集を行う前に、土砂崩れ一体を封鎖する必要がありました。その結果、復旧作業が遅れ、トンネルとその先の地域へのアクセスが長く遮断されることになっていたでしょう。

LiDARスキャンのフライスルー映像
元記事ページにてLiDARスキャンのフライスルー映像をご覧いただけます(外部サイトへ)

ここでELIOS 3を使用したことの成果は、計り知れません。調査員は事故の翌日に被害を受けたトンネルに入ることができ、迅速に対応できました。以前は、調査員が近づく前に土砂崩れの地域の安全性が確保できるまでに数日から数か月かかることもありました。ドローンによる遠隔アクセスにより、作業時間が短縮され、はるかに小規模なチームで迅速に情報を入手できるようになりました。

安全性を重視した革新的な技術を活用することで、ヴァレー州の自治体はすべての調査員の安全を確保しながら重要なデータを迅速に収集できました。この検査で得た地質学的発見は、このトンネルの修復作業やヴァレー州周辺の今後の調査に利用される予定です。気候変動により予測不可能な地質学的事象が発生する可能性が高まる中、これは極めて重要です。

■出典:Flyability社,
「Investigating a collapsed tunnel after a landslide in the Swiss Alps」
https://www.flyability.com/casestudies/collapsed-tunnel-landslide

ELIOSに関するお問合せ・ご相談

ブルーイノベーション株式会社
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