ELIOS 3で新設セメント工場のデジタルツインを構築し、経年変化を追跡
2025/8/21
グローバル 国際的なセメント会社である Refratechnik Cement社は、ELIOS 3を使用した、新しいセメント工場設備のデジタルツイン作成をInspecDrone社に、依頼しました。メリットの概要
3Dライブマップ ELIOS 3のLiDARが取得するデータによって、リアルタイムで3Dモデルを把握し、各設備の状況を確実に認識することが可能になりました。 |
測量レベルのデジタルツイン ELIOS 3のLiDARデータから、GeoSLAM Connect(※現Faro Connect)によってこのセメント工場の正確なデジタルツインを作成し、工場の元の状態を記録しました。この記録は、今後作成されるデジタルツインと比較することで、不具合の有無を時系列で確認することができます。 |
迅速なデータ取得 飛行時間10分足らずで、ELIOS 3は3つのサイクロンのデジタルツインを作成するのに十分なLiDARデータを収集することができました。手持ちのスキャナーを携えて徒歩でエリアを調査する場合に比べ、データ収集の効率が大幅に向上しました。 |
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プラント管理における課題
プラント運営者が直面する共通の課題は、プラント設備の経時的な変化の追跡です。
セメント製造では、プラント運営者は、不具合の発生を予兆する設備の変化を早期に発見し、問題が悪化する前に解決することが重要となります。
運営者は、焼結物が形成される場所を監視する必要があります。サイクロンやカルシナーの壁に厚い焼結物が形成されること自体は完全に正常な状態ですが、その量と位置を把握することは、清掃に必要な時間と人員を計画する上で重要です。
経時的な変更を追跡する上での大きな障害となるのが、プラント建設時に使用された計画と実際の状態が異なる可能性があるということです。そのため、元の計画が経年変化を追跡するための最も信頼できる情報源とは限りません。

経時変化をトラッキングする最新のソリューションとしては、プラント管理者がLiDARスキャナーでプラントをスキャンして、そのデータを使用してプラントのデジタルツインを作成し、プラントの実際の様子を3Dモデルで表示する方法があります。
この3Dモデルは、特定の時点におけるプラント全体のデジタル写真のような役割をします。将来の3Dモデルを過去のモデルと比較することで、検査員やメンテナンス管理者は、経時的に発生した変化を追跡することができるのです。
デジタルツインとは?
デジタルツインとは、3Dモデルの別名です。産業用点検において、デジタルツインとは、同一の建物や設備の、異なる時点の3Dモデルを使用し、時間の経過に伴う変化をメンテナンスの目的で追跡する手法を指します。
最初のデジタルツインを作成するのは、プラントの建設直後が理想です。そうすることで、プラントが稼働し、変化し始める前に、プラント全体の正確な状態を情報として得ることができます。
この技術は新しいものであるため、プラントが新しく、まだ使用されていない段階で、プラント全体の3Dモデルが作成された例はそれほど多くありません。
しかし、この手法が普及するにつれて、業界を問わず、新しい産業プラントの稼働開始前の最初のステップとして、デジタルツインの作成が一般的になる可能性が高いでしょう。
ELIOSによるデジタルツイン作成計画
Refratechnik Cement社(ドイツ)は、世界中でセメント製造用の耐火物を製造・供給する企業であり、Märker Zement社が所有するハールブルク市にあるセメント工場のクリンカー焼成ライン全体の耐火物について、発注を受けました。またMärker Zement社は、ハールブルク市にある50年以上の歴史を持つ既存のセメント工場を、最新式のキルンラインに置き換えるための主要請負業者としてIKN GmbH社を選定しました。
プラントが稼働を開始した後、その建設時の状態に関するデータを収集する機会は二度とないため、これはまたとない特別な機会となりました。
このユニークな機会を活かし、Märker Zement社は新しいセメントプラントのデジタルツインを作成し、経年変化を追跡するためのツールとして活用する計画を立てました。この3Dモデルは、将来の3Dスキャン用のベースラインとなり、プラントの検査員は、元のデジタルツインと後で作成されたデジタルツインを比較して、日常の稼働で発生した欠陥を特定することができるようになるのです。
このデジタルツインプロジェクトの一環として作成された、新しいセメント工場のサイクロンの3Dフライトビューをご覧いただけます。
Refratechnik社の主な目標のひとつは、セメント製造プラントで使用されているサイクロン、カルシナー、クリンカークーラーなど、耐火物で覆われた設備の内部のデジタルツインを作成し、将来の点検に活用することでした。このデジタルツインは、点検に役立つだけでなく、プラントで働く従業員に、設備内の作業場所を示すためにも活用できます。
手持ち型スキャナーを使用してLiDARデータを収集し、プラントのデジタルツインを作成するアプローチは選択肢から外れました。この作業には数週間を要し、かつプラントの稼働開始が迫っていたため、そのような時間がかかる作業は不可能だったからです。
また、手持ち型のLiDARスキャナーでは、マンホールの開口部付近のデータしか収集できないため、サイクロンやその他設備の内部の3Dモデルを作成するのに十分なデータを収集することができませんでした。データに欠落があると、デジタルツインも十分なものとはなりません。
ドローンによるデジタルツインの作成
さまざまな選択肢を検討した結果、Refratechnik社の担当者は、ドローンによる点検を行う InspecDrone 社に、ドローンを使用してプラントとその設備のデジタルツインを作成する方法がないか相談しました。

InspecDrone社の創設者であるSimon Kumm氏は、FlyabilityがELIOS 3の開発に取り組んでいた当時、同社の製品アドバイザーを務めていたこともあり、狭小空間での飛行が可能で、Ouster OS0-32 LiDAR センサーを搭載したELIOS 3が、Refratechnik社のニーズに最適なソリューションであると考えたのです。
Kumm氏は、このデータセンサーから得られたデータをGeoSLAM Connect(※現Faro Connect)で処理することで、Refratechnik社が求めるデジタルツインを作成できると確信しました。また、ELIOS 3は LiDARデータとFlyabilityのSLAMエンジンFlyAwareを使用して、ドローンの飛行中に3Dライブマップを作成し、ドローンが設備内のどこにあるかを正確に表示します。
デジタルツイン用データの取得
ELIOS 3を使用することで、新工場のデータ収集を迅速に完了することができました。その後、GeoSLAM Connect(※現Faro Connect)で処理し、工場の内部および設備の高精度な測量級デジタルツインを作成しました。
Kumm氏は、ELIOS 3を使用して、6台のサイクロン、クリンカークーラー、高さ50 メートルのカルシナーなど、セメント工場の設備すべての内部をデジタルツイン化しました。また、ELIOS 3を工場の各部分で飛行させ、モデルも作成しました。これらのモデルを結合することで、工場の内部全体をデジタルツインとして表示することに成功したのです。

「スキャンの品質は実に素晴らしいものです。このスキャン結果を見た人は皆、ライブマップ 3Dモデル、取得されたデータ、そして飛行後に処理された3Dモデルに驚愕しました」
- Simon Kumm氏
これらのモデルを作成した後、それらを元のCADファイルに重ねて正確さを確認したところ、デジタルツインとCADファイルの精度は非常に高く、その差はわずか1センチ程度だったのです。
デジタルツインに加え、ELIOS 3は工場全体とその設備の内部に関する高品質な視覚データも提供しました。
将来的には、検査員はその時点での新しいデジタルツインを作成し、それを元のデジタルツインと比較することで、その間に発生した欠陥を見つけることができるようになります。欠陥が発見される度、デジタルツインの作成と同時に撮影された設備の写真を確認することで、発生に至る変化を視覚的に把握することができるようになるのです。

ドローンによるデジタルツイン作成がプラント業界に与える影響
はじめてのデジタルツイン作成後、次回はプラント稼働開始から約6か月後に予定されているプラントの最初の停止期間中に、新たなデジタルツインを作成する予定となっています。
次のデジタルツインは、プラントの検査員にとって重要な情報源となり、稼働開始前に作成した元のデジタルツインと新しい3Dモデルを比較して、発生した変化を特定することができるのです。
「発電所をはじめとする多くのプラント運営者から、施設の再構築や変更を行う前に、常にレーザースキャンを実施していると聞きました。これは、よりインテリジェントなメンテナンスであり、メンテナンスの改善に向けた論理的なステップだと確信しています」
- Simon Kumm氏
Kumm氏がプラント全体のデジタルツイン作成を依頼されたのは初めてでしたが、彼は今後、新規施設立ち上げや既存施設の経年変化の追跡など、多様な産業プラントのメンテナンス管理において、デジタルツインが広く採用されるようになると信じています。
■出典:Flyability社,
「Elios 3 Makes Digital Twins of New Cement Plant to Track Changes Over Time」
https://www.flyability.com/casestudies/drone-digital-twin
ELIOSに関するお問合せ・ご相談
ブルーイノベーション株式会社
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