航空法改正から10年、
ドローンの社会実装を支える基盤とは

2025/12/5

~ドローンの日に振り返る、制度・人材育成・国際標準化の歩み~

12月10日は「ドローンの日」です。

この日は、2015年12月10日の航空法改正により無人航空機の飛行ルールが新たに整備され、日本でドローンの安全運用に向けた取り組みが本格的に動き始めたことに由来しています。

今年は、その航空法改正からちょうど10年の節目にあたります。

この改正を契機に、ドローンの安全運用に関する取り組みは大きく前進しました。

ブルーイノベーションも制度化以前から、官公庁や企業のみなさまと連携し、安全運用の環境づくりや産業基盤の整備に携わってきました。

本コラムでは、日本のドローン社会実装がこの10年でどのように形づくられてきたのかを、「制度」「人材育成」「国際標準化」の三つの視点から振り返ります。

■2015年12月10日 ― 日本のドローン制度が動き始めた日

2015年4月、首相官邸の屋上に放射能汚染土や発煙筒を搭載したドローンが発見。ドローンの存在を広く知らせるきっかけとなる事件となった

2015年4月22日、首相官邸の屋上でドローンが発見されるという事件が発生しました。
この出来事を受けて社会の関心が高まり、政府は安全対策の検討を急速に進めました。

そして同年 12月10日に改正航空法が施行され、無人航空機に関する規定が初めて法律として明確化されました。
飛行禁止空域、夜間・目視外飛行の扱い、許可・承認制度など、ドローンを安全に飛行させるためのルールが可視化され、制度として整った瞬間でした。

日本はこのとき、「活用を制限する」のではなく、安全に活用するための制度を整えるという方針を選択しました。
この判断が、その後の社会実装に向けた取り組みを前進させる重要な分岐点となりました。

■制度の裏側で、産業界が築いていた基盤づくり

2015年3月に開催されたドローン安全委員会(JUIDA提供)

ただし、2015年の制度整備は突然生まれたものではありません。
その前段階から、産業界では自主的なルールづくりや安全ガイドラインの策定が進められていました。
その中心となったのが、2014年に設立された JUIDA(一般社団法人日本UAS産業振興協議会) です。
まだ明確な制度や教育体系が存在しなかった時代に、

・安全運航管理
・操縦者教育の標準化
・産業界としての安全文化の確立

といった取り組みを進め、社会実装に必要な土台を整えてきました。

ブルーイノベーションは、JUIDAの設立に携わり、行政・企業・大学など多様な主体をつなぎながら、制度化以前から枠組みづくりに深く関わってきました。産業界・政府・学術界を結びつけ、ドローン活用に必要な知識・ルール・教育の体系化を支援してきたのです。

日本のドローン制度は、「産業界が基盤を整え、国がそれを制度へと昇華していった」という点に特徴があり、この協働構造が日本独自の安全文化を形づくる礎となりました。

■人材育成 ― 社会実装を支える根幹

ドローン実技講習の様子

制度と並んで欠かせなかったのが人材育成の仕組みです。

ドローンを安全に運用するには、「空域」、「気象」、「機体構造」、「電波」、「リスク評価」など幅広い知識が求められ、操縦経験だけでは、安全運用は成り立ちません。

JUIDAは早期に教育カリキュラムを整備し、全国のスクールとの連携を広げてきました。
操縦者や安全運航管理者の教育体系を築いたことで、地方自治体や企業が自ら人材を育成できるようになり、社会実装の裾野が広がりました。

ブルーイノベーションも講習カリキュラムの設計や教育コンテンツの開発に取り組み、現場ニーズに基づいた育成体系の構築を支援してきました。

2022年には国家ライセンス制度(無人航空機操縦者技能証明)が導入され、民間が築いてきた教育体系が制度として形となりました。

これは、人材育成の取り組みが10年かけて社会的に認められた象徴とも言えます。

■国際標準化への参加が示す、日本の信頼性

ISO5491に準拠したブルーイノベーションのBEPポート

ドローンは国際的な産業であり、安全基準や運航方法、機体の要件などは国境を越えて共通化が進んでいます。
こうした議論の場であるISO(国際標準化機構)には、欧米・アジアを中心に多くの国が参加し、基準づくりが進められてきました。

ブルーイノベーションは、国際標準化の推進にも積極的に取り組んできました。

特に、世界初となるドローンポートのISO規格化を提言し、2020年9月からは、有人・無人航空機の離発着を担う空港インフラ(SC17)運航システムの国際標準化を進めるワーキンググループの議長およびプロジェクトリーダーを務めています。

そして2023年6月、経済産業省・国土交通省、国内外のエキスパートとともに進めてきた取り組みが結実し、「物流用ドローンポートの設備要件に関する国際標準規格 ISO 5491」が正式に採択・発行されました。

このような国際標準化活動は、「日本のドローン運用は安全性が高く、信頼できる」という評価につながる重要な成果です。

■“基盤”が形づくられたことで見えてきたもの

制度、人材、標準化という基盤が整ってきたことで、日本では次のような環境が生まれています。

・安全運用の考え方が広く共有されるようになったこと
・点検・測量・防災など特定分野で社会実装が進み始めていること
・自治体や企業が自らの課題に合わせてドローンを活用できるようになったこと
・レベル4飛行に向けた制度・環境整備が進んでいること

これらは「成熟した」と言える段階にはまだありませんが、確かに“基盤が形づくられてきた10年”だったと言えます。

■これからの10年で求められる視点

ドローンの普及はこれからさらに加速し、

・AIによる自動飛行
・遠隔管制
・複数機運航
・災害対応の標準化

など、より高度な運用が求められます。

その一方で、住民理解、プライバシー、騒音、安全説明といった社会との調和も重要性を増していきます。

次の10年に必要なのは、技術進化と社会受容性を両立させる視点です。
そのためにも、これまで築いてきた制度・教育・標準化の基盤が、これからの社会実装を支える力になると考えています。

■最後に

2015年12月10日の航空法改正から10年。

この節目に、日本が積み重ねてきた制度・人材・国際標準化の取り組みを振り返ることは、これからの社会実装を考えるうえでとても意味があります。

まだ道半ばではありますが、日本はこの10年で“社会実装に向けた基盤”を着実に形づくってきたと言えます。

ブルーイノベーションはこれからも、安全で信頼されるドローン活用の実現をめざし、産業界・行政・地域社会とともに取り組みを進めてまいります。

参考リンク

・一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)
https://uas-japan.org/

・世界初、物流用ドローンポートの設備要件を国際標準規格化
https://www.blue-i.co.jp/news/release/20230626_1.html

 

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