危険な下水道点検を“人が入らずに”安全に
~栃木県野木町での取り組みに「ELIOS 3」を活用・自治体関係者も注目~
2025/10/2
渡辺建設株式会社 様
栃木県の土木工事・インフラ整備を手掛ける渡辺建設株式会社は、9月16日、栃木県下都賀郡野木町にて屋内点検用ドローン「ELIOS 3」を活用した下水道点検を実施しました。
同社は、従来の点検作業で最大の課題である「作業員の安全確保」と「業務効率化」の両立を目指しており、今回のドローン点検を通じて、次のステップである標準化に向けて動き出しています。
当日は栃木県内の自治体職員や建設コンサルタント、メディア関係者など約30名が見学に参加。実際の運用を目の当たりにし、安全で効率的な点検方法に高い関心が寄せられました。


危険と隣り合わせの下水道点検
2025年1月の埼玉県八潮市での道路陥没事故を受け、国は全国の自治体に対し「特別重点調査」として下水道管路の緊急点検を求めました。
しかし、その特別重点調査の作業中である2025年8月、埼玉県行田市でマンホール内に入った作業員4名が硫化水素など有毒ガスの影響で倒れ、全員が命を落とすという痛ましい事故が発生しました。
こうした相次ぐ事故により、下水道点検はこれまで以上に「作業員の安全を確保しながら進めること」が重要項目として挙げられています。
見学会に参加した自治体の職員からは、「硫化水素の発生も怖いが、最近は突然の降雨も心配。点検作業中に上流で雨が降ると、管路内の流水量が突然増え、作業員が流されるリスクもある。」といった声も聞かれました。

これらの課題解決に向け、同社では2015年頃からドローンや自走式のロボットの導入を開始しました。以降、現場課題に即した技術選定と運用ノウハウの蓄積を重ねてきました。
実際、今回点検を実施した箇所も、平常時は大人が問題なく歩行できるほどの流量(足首程度の深さ)ですが、台風来襲時には水面が管路の天井近くまで上昇することが確認されています。
本見学会の冒頭には参加者への安全対策に関する説明が行われ、現場における注意点や安全行動などにも配慮されたうえで実施されました。

ドローンによる安全な下水道点検
今回の対象は、3000×2800mmのボックスカルバート。操縦者は地下には入孔せず、ドローンとプロポの電波環境を補うRange Extender※を使用して地上から安全に操縦しました。
点検は約120m(2スパン分)を対象に3回の飛行で実施され、1回目でスクリーニング飛行(全体の下見)、2回目・3回目で機体を平行移動しながら側面の撮影や、カメラを上面に90°チルトさせて天井面の撮影を実施しました。
1回の飛行に要した時間は7~8分ほどで、全体でも約30分程度で終了しました。


撮影映像はリアルタイムでモニターにも映し出され、LEDライトにより明るさも確保されたうえで撮影した映像は、目視検査が十分に可能な画質であることが確認されました。さらに操縦者がプロポから手を離してもELIOS 3はその場で安定してホバリング。その高い安定性に、参加者からは驚きと感心の声が上がりました。
ドローンが取得したデータの確認
点検飛行後、ELIOS 3が取得したデータをノートパソコンで即時確認。3Dマップ上に飛行経路やELIOS 3が撮影した映像が同時に映し出され、「どの位置に」「どのような変状があったか」を明確に把握できることが示されました。
質疑応答では、電波の届く範囲やバッテリーの交換の仕方、データの見方など、実運用を見据えた具体的な質問が相次ぎました。自治体職員からは、「埼玉県の八潮市での事故が起こってから、下水道点検の重要性や見方も変わっており、やり方も変えていかなければならない。」との声も聞かれました。

今後の展望
「これまで危険と隣り合わせだった現場を、安全な場所に変えていきたい。ELIOS 3を活用して、安全を確保するだけでなく、誰もが同じ基準で同じクォリティの点検を可能にするための指標にしていきたいと思っています。また、今回のような取り組みは、自治体の要望にしっかり応えていくために、推進していきたいです。」
渡辺建設株式会社 土木部 次長 関 政勝 氏
COMPANY PROFILE
渡辺建設株式会社
本社所在地 | 栃木県宇都宮市今泉新町180番地 |
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設立年 | 1951年1月 |
従業員数 | 162名 |
URL | https://www.watanabekensetsu.jp/ |
事業内容 | 土木・舗装・建築・上下水道・賃貸マンション・造園植栽・ 測量・不動産・ガス配管・ アスファルト合材等 |
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※1 屋内点検用球体ドローン「ELIOS 3」
ELIOS 3は、 Flyability社が開発した非GNSS環境下の屋内空間などの飛行特性に優れた屋内用ドローンELIOSシリーズの最新機種です。世界初の3Dマッピング用LiDARセンサーを搭載。点検・施設情報をリアルタイムで3Dデータ化し、位置特定が可能です。また、最新のSLAM技術により操作性・安定性も大幅に向上し、操縦者の負担軽減と飛行時間の短縮を実現しています。ブルーイノベーションは2018年に日本おける独占販売契約を Flyability社と締結し、ELIOS シリーズを活用した点検ソリューションの提供を開始しました。2024年現在、我が国ではプラントや発電所、下水道などを中心に300ヶ所を超える現場での導入実績があります。(https://blue-i.co.jp/inspection/ )。

※2 Range Extender
複雑な地下トンネル等の電波の送受信可能な範囲に制約がある場合、無線通信拡張ユニットRange Extenderを導入することで、プロポ(注:プロポーショナルコントローラの略。ドローンを操縦するコントローラを指す)より最大20m先までケーブルを伸ばして送受信機を配置することができます。地下空間などにパイロットが入ることなく、ELIOS 3を操縦することが可能です。
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